アートワークセラピーとは、絵画や造形などの芸術を通して心のケアをする心理療法のひとつです。非言語的セラピーですので、子どもからお年寄りまで、また精神的な病気を持つ人から、健常者まで、広い範囲の方たちを対象に行えるセラピーとして近年日本でも注目を集めています。
アートワークセラピーは、様々な素材を媒体とし、様々な表現プロセスを通して、人間の内的成長と創造性を促すことができます。
アートワークセラピーで創りだされた絵画や造形は、非言語的な媒体を用いることで表現した、自分自身でも見えない心を映す鏡なのです。これは、子どもの本当の気持ちを知りたい親、生徒の感じている気持ちを知りたい先生などが、理解を深める助けとなるでしょう。
アートワークセラピーとは、さらにそこから皆さんが人生や日常生活をより豊かに送ることのできるヒントを見つけていくセラピーなのです。
マーガレット・ナウムブルグが、精神医学と芸術表現に治療という関連性を見出したのが、おそらくアートセラピー(アートワークセラピー)の始まりではないかといわれています。
パイオニアとされているマーガレット・ナウムブルグは、1914年に精神分析理論に基づいた学校をニューヨークに設立し、1940年代になると、子供や精神病・神経症の患者についてのアートワークセラピーの本をたくさん出版しています。
また同じ頃、イギリスで結核患者のためのサナトリウムでアートを教えていたエイドリアン・ヒルが、初めてアートセラピーという言葉を用いたのが、アートセラピーという言葉の始まりのようです。
そのエイドリアン・ヒルのもとで働いていたエドワード・アダムソンは1946年にロンドンの精神病院でオープンスタジオ形式のグループアートセラピーを開設し、以降そのスタイルは多くの精神病院で行われることになるきっかけになりました。
アメリカでは、ナチスドイツに追われて亡命してきたイーディス・クレイマーが1950年からスラムの情緒障害児のための収容施設や視覚障害児の学校などで、子供を中心にアートワークセラピーを行い、アメリカ第二のパイオニアとして活躍を始めます。
その他にもいろいろな説があるようですが、精神病者の治療が目的の一つであったことは違いがないようです。
アートセラピー(アートワークセラピー)という言葉は使っていなくても、芸術活動を通して心を癒していく作業は古代から世界中で行われてきたようです。
これらの先達者の働きが、やがてアートワークセラピーの協会設立へと結実していくのは1960年代に入ってからのことです。
イギリスでは1964年に the British Association of Art Therapists(BAAT)が設立され、アメリカでは1969年に the American Art Therapy Association(AATA)が設立されていきました。
その後アメリカにおけるアートワークセラピーの広がりには、目覚しいものがあります。
1971年までにはすでに3つの大学院レベルのコースができていましたが、1979年までには22の大学院レベルのプログラム、41の学部レベルのプログラムがスタートしたのです(イギリスではアートワークセラピーを教えている大学は3校のみです)。
米国では心理学と美術教育を大学レベルで習得し、大学院でアートワークセラピーの臨床体験を約2000時間経験することをセラピストは求められます。
現在日本には、アメリカの国際表現病理学会をもととする日本芸術療法学会がありますが、主に精神的な治療を目的とした芸術療法で、なかなか一般には浸透していっていません。その他にも「日本描画テスト・描画療法学会」、芸術とヘルスケア協会などがありますが、どれも精神障害を初めとした専門的な治療を根本の目的としているようです。
アメリカでは、アートワークセラピーはすでに社会的に認知された職業のひとつとして確立されています。その雇用範囲は、さまざまな 医療機関・教育現場・福祉施設などに広がっています。また出版されている関連専門書物も300数十冊を数えます。
残念ながらこの働きは日本にはまだ普及しておらず、大学院はおろか学部においてもアートワークセラピーの学科は設けられていないのが現状です。





